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『木造住宅の合理化 ~3Dプリンター住宅からの気づき~』

皆さん、こんにちは。

先日、3Dプリンター住宅を見学する機会がありました。近年、3Dプリンター技術は革命的な進化を遂げ、建設業界においても大きな注目を浴びている技術です。

今回見学した住宅は壁面を3Dプリンター、屋根面を木造で建設されたハイブリッド構造です。

3Dプリンター住宅の利点は、以下の3つです。

1. 建設スピードが早い
2. 建設コストが安い
3. 複雑なデザイン(曲線など)に対応できる
※100%3Dプリンターで建設した住宅

このような利点を生かして、職人不足やそれに伴う住宅品質の低下、住宅価格の高騰やそれに伴う住宅不足といった社会課題を解決することが3Dプリンター住宅を開発する方々のミッションだそうです。

見学前に疑問に思っていた耐震性、断熱性、耐久性については、詳細は割愛しますが一般的な木造住宅と遜色ないレベルでした。逆に条件次第では3Dプリンターの方が上回るレベルまで技術が進んでいました。

3Dプリンター住宅の現状の課題は、2階建てには対応できないことや、コストが目標にしているレベルから見て普及が進んでいない分まだまだ高いこと、3Dプリンターを設置できる広い敷地が必要、といったところでした。

ユーザー側としての個人的な感想で言えば、率直に木造住宅の方がいいというのが正直なところです。しかし、今回見たハイブリッド構造で上手くコストダウンを図れるのであれば木造と3Dプリンターのいいとこ取りになりますので、木+RCのデザインとしても格好良いのでありだと思います。(現実的にはハイブリッド型でコストを木造以下にするのは難しいと思います)

木造部分には無垢の内装材がふんだんに使われており、近年はめっきり日本では見かけなくなった、ピーラー(米松の目細材)という樹種で仕上げてあり、職業柄ついついピーラーの美しさに見とれてしまいました。

今後、3Dプリンター住宅が普及するとすれば、災害時の仮設住宅やRC造の住宅文化が定着している国、また木材がなかなか手に入らない発展途上国などが対象になるのではいかと思います。また、今回見学した企業としては将来、火星や月面での建設を目指すという壮大なビジョンを語られていました。

日本は国土の3分の2を森林が占める森林大国であり、木材をふんだんに使える恵まれた国です。故に昔から木造住宅に慣れ親しんだ文化がありますので、なかなか3Dプリンター住宅の普及は難しいマーケットであると考えています。

木材業界の人間として、これまで3Dプリンター住宅という新しい技術を正直、脅威と感じていましたが今回の見学でその心配が和らぎ、逆に木造住宅の良さを再認識することができました。さらに3Dプリンター住宅の利点である、早い、安い、デザインが良いという3拍子をいかにして木造住宅で実現するかといった目標がより強まったことが一番の収穫でした。

当社の住宅事業エツサスも「建築プロセスの合理化」をテーマに掲げ、設計の規格化・標準化を図り、如何に高品質・高性能な住宅を安く提供するか、そして一人でも多くの方に高性能で快適な住宅に住んでもらいたいというミッションで取り組んでいます。これからも3Dプリンターに負けないように更なる木造住宅の合理化を追求して参ります。

「常に新しい価値を創造する」
            企業理念第2章