月別アーカイブ: 2017年9月

『ポートランド視察(後編)』

今回の視察研修の目玉は「ストリート・オブ・ドリームズ2017」という、
ポートランドで毎年夏に開催される高級住宅の展示会です。

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地元のビルダーが超ハイスペックな住宅を建築し、分譲住宅として販売されます。
また、一般来場者や建築の専門家によるコンペも行われるというアメリカ屈指の
住宅イベントなのです。

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アメリカの住宅業界における最先端のトレンドを発信していることから、
約一カ月の開催期間中には一般消費者からプロの業界関係者まで、
5万人を超える来場者があるそうで、当日も会場は大変賑わっていました。

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ポートランド中心地から少し離れた自然豊かな閑静な住宅街に
5棟の住宅が建築されていました。建物面積は全て100坪超、
分譲価格(土地含む)は1億5千万円~という、いわゆる大豪邸です。

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まさにアメリカ映画に出てくる庭付き、プール付きのアメリカンドリームな家です。
その夢の住宅展に、初めて日本の企業が出展したのです。

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                  「SUTEKI」の外観

建築主は当社が大変お世話になっているナイス株式会社(Suteki America Corporation)
さんで、今後、アメリカの住宅市場で「SUTEKI」というブランドで事業展開される予定です。
是非、住宅版レクサスを目指して頑張っていただきたいと思います。

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                  「SUTEKI」の外観

設計は新国立競技場の設計をされた建築家の隈研吾氏。

隈さんと言えば著書「負ける建築」で有名ですが、負ける建築とは自己主張せず、
周囲の環境に溶け込む建築のことで、自然素材の「木材」を多用するデザインが特徴ですね。

新国立競技場にもたくさんの木材が使用される予定です。

隈さんは21世紀は木の時代、木が新しいトレンドになると提言されています。
木は柔らかく、人に優しい素材、人を引き寄せる力があると、様々なメディア等で
語られていますが、木材業の端くれの私も全く同感です。

このような権威ある方が木の良さを発信していただけるのは
私たち業界人にとっては大変有り難く、心強いものです。

「SUTEKI」の設計コンセプトは大きく2点。
「クロスカルチャー(異文化の融合)」 「サステナビリティー(持続可能性)」

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アメリカと日本の暮らし・文化を融合した空間構成、サステナビリティーな素材
である木材も、アメリカ産と日本産を融合させてのコーディネートになっています。

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       国産杉のドアとアクセントウォール

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       アラスカイエローシダーのルーバー

構造は鉄骨と木造のハイブリッド(混構造)で、メイン空間のLDKは鉄骨造
にすることで吹き抜け&大開口の空間となり、室内から外の自然を一体として
感じれる最高に居心地の良い空間となっています。

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                  「SUTEKIの内観」

内外をつなぐ深い軒下や縁側というのは、これまでのアメリカの住宅にはない
大和ごころの設計手法ですが、自然を大切にする価値観のポートランドの人には
間違いなく受け入れられる空間だと思います。

コンペでは予想通り、最高賞「ベスト・オブ・ショウ」を受賞されたそうです。

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今回のポートランド視察研修での一番の収穫は
「木」の素晴らしさと未来の可能性を実感できたことです。

これからは、社会も、企業も、人も、サステナビリティ(持続可能性)な
理念・生き方を追求していく時代ですし、そんな私たちのライフスタイルに
必要不可欠なのが、やはり「木」であると確信できました。

「木と人と未来をつなぎ、結ぶ。」

改めてその覚悟を定め、邁進して参ります。

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「ポートランド日本庭園文化会館」隈研吾氏設計

『ポートランド視察(前編)』

皆さん、こんにちは。
読書の秋、スポーツの秋、秋は何をするにしても良い時期です。
今しかできないことを思う存分楽しみましょう!

さて、この度アメリカ・オレゴン州のポートランドへ行ってきました。

ポートランドは今、世界的に注目されている街で、

全米で最も住みやすい街
全米で最も環境にやさしい街
全米で最も自転車通勤者にやさしい街
全米で最もベジタリアンにやさしい街

等々に選出されています。

人口も2000年比で24%増、住宅価格が2012年比で1.6倍。
全米からの移住者が後を絶たない人気の街なのです。

何が人気かというと、ビオトープやオーガニックといった自然を大切にする価値観、
サステナブル(持続可能性)な社会を本気で創ろうとする精神、
多様な価値観を受け入れる寛容な文化、

そのような理念・生き方に共感する人々、特にクリエイティブな若者や
環境意識の高い富裕層が集まる街なのです。

都市の木造化・木質化が進んでいます

   都市の木造化・木質化が進んでいます

古い倉庫をリノベーションしたランドリー

  古い倉庫をリノベーションしたランドリー

オーガニック野菜や果物のマーケット

   オーガニック野菜や果物のマーケット

暮らしやすさという現実的な点でも地震やハリケーンなどの災害がほとんどない、
消費税が掛からないといったことも理由の一つかと思います。

また、北米のなかでもオレゴン州は木材の産地で、米松や米杉、米ヒバといった
木材が原木や製品で世界中に輸出されています。

このような木材産業の盛んな地域から、サステナブルな街が醸成され、
地域経済も活性化するという好循環を創り上げた、先進的な事例を
肌で感じ、学ぶ、というのが今回の視察研修の目的であります。
(決して遊びではありません。笑)

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今回の視察先の一つは米松の製材工場 「コロンビアビスタ」。
品質要求が厳しい日本向けに特化した製材工場です。

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先ず最初に感じたのは社長はじめ従業員の皆さんのいきいきと働く姿です。
自分達の仕事に誇りをもって働いているという雰囲気が伝わってきます。

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コロンビア川とマウントフッドが一望できる素晴らしい自然環境、
木材というサステナブルな資源を扱い、地元でも最上級の丸太を専門にした製材。

企業の社会的価値とモノづくりへの拘りが、「仕事の誇り」の源泉なんだと思います。

アメリカは転職が一つのステータスとなるビジネス文化がありますが、
この製材工場は離職率が一般的な企業と比べ極めて低いそうです。

当社も工場の立地条件(自然環境)は適いませんが、社員が働きやすい環境を整備し、
木材というサステナブルな資源を扱っているという社会的価値、品質に拘ったモノづくり、
ということを社員一人ひとりが改めて認識することが必要だと感じました。

そのような誇り高い仕事を通じて、一人ひとりがそれぞれの目標に向かって成長出来れば、
この上ない喜びが感じられるものと思います。

ビジョン「働き甲斐NO,1の誇れるブランド企業」の実現を確信できた体験でした。

後編へ続く