木材はエコロジカルで再生可能な建築資源
以前に実施されたアンケート結果では、これから家を建てたい人の約85%が木造住宅を望んでいる。ところが、最近では「木」の伐採による森林破壊が、地球環境や自然資源の保護という観点から問題ありとの報道が盛んなために、「本当に木の家を建ててもいいのだろうか?」と不安に思っている人も少なくないはずだ。 まず「木とはいったい何か?」を再確認してみたい。「木」は成長のために地中から水を吸い水素と炭素を得る。そして日中、葉から大気中の炭素と酸素からなる二酸化炭素を吸う。すなわち、「木」とは炭酸ガスを太陽エネルギーによって、その体内にセルロースやリグニンという炭酸化合物として固定したものであり、燃やされない限り、伐り取られても炭素をそのまま体内に固定し続けている。 このように「木材」は、生物資源・野菜等と同じように太陽エネルギーによって出来た資源であり、伐採したあとに樹木を植えれば、やがてそこに新しい木材資源を再生産できる。他の建築資材は使用すれば確実に炭酸ガスを増加させるのに、木材だけは使用しながら炭酸ガスを減らすことが可能であり、きわめてエコロジカルな再生可能資源といわれるゆえんである。
エネルギー消費の少ない木材
現在の地球では化石燃料を燃やし、エネルギーとすることで大気中の炭酸ガスがどんどん増えている。日本が大気中にだす炭素の放出量は、年間3億tにも達するといわれているが、今後はエネルギー消費の少ない資源を用いることが大変重要になってくる。例えば、前回のリレハンメル冬季オリンピックが「地球環境に調和したオリンピック」を謳い文句に、競技場や施設をすべて木造にしたのも、木が最適の資材であり環境に一番調和したもの考えからだ。(図1参照) 表1に示したように、木材は鋼材やアルミニウムなどに比べ製造時のエネルギー消費が格段に少ない。また、表2のように、アルミサッシと木製サッシの比較をみても、製造時の炭素放出量は木製サッシはアルミサッシの35分の1であり、廃材として燃やした時にも炭素放出量はアルミサッシの10分の1にすぎない。 住宅を建てる時の炭素放出量を木造住宅、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造などの構造別に比べると、床面積一m2当たり、木造では80kgの炭素を出しているが、他の構造ではその5割増しから倍にもなる。
木は燃えるけど強い
一般的に、木は燃えるから強度も落ちると思われがちだが、実はそうではない。木の引火点は約260℃で発火温度は約450℃、そして500℃で灰になるが、当然、酸素がなければ火はつかないし、燃えるのは表面からで,強度が急に落ちることはない。(図2参照) 木材の燃えるスピードは1分間に約0.6~0.8mmで、30分間持たせるためには約25mm余分に厚さがあれば大丈夫ということになり、これが準耐火構造と呼ばれる基準の一つである。 このように、最近では木造建築の領域が急速に広がり、準耐火構造の木造三階建て住宅なども建てられるようになってきた。
木は腐らないかぎり千年以上の耐久性がある
現存する日本最古の建築物といわれる法隆寺はヒノキで造られ、約1200年くらい経っている。ヒノキだから残ったと思われがちだが、腐らなかったのは、それなりの理由がある。腐るというのは自然現象ではなく、腐朽菌という菌がつくからである。その生育条件は酸素があり、水があり、適度な温度と栄養があることで、どれが欠けても生きられない。その点、法隆寺の場合は濡れてもすぐ乾くように工夫した状態で造られ、水が停滞しないようになっている。木は腐りさえしなければ、その耐久性は千年以上もほとんど変わることがない。 また、エジプトのミイラが入っていた紀元前2000年の木の棺が、いまでも木目がはっきり分かるほど新品同様で発掘されている。当時はエジプトにも木が繁っていたが、植えることを忘れたため砂漠となり、文明が滅んでしまったのである。
耐用年数のアップとリサイクルも大切
一般の木造住宅は大体25年で壊されている。これはちょうどローンの償還年数であり、お金を返したら家も終わってしまうことになる。他の構造ではどうかというと、プレハブ・非木造は約20年。これが日本の住まいの現実であるが、家を壊す理由は、腐ったり耐久性がなくなったからではなく、使い勝手が悪い、狭いというのがほとんどの理由だ。だとすると、造る時に何年先を考えるか、また耐用性を高めるためにどうするかが大切になってくる。 また、壊したあとの再利用、リサイクルも大切なことだ。木材はきちんと処理すれば、紙やボード類、燃料になる。他の建築資材との違いは、木材は燃やせば炭素と水に戻ることで、廃棄物処理による害が少ないことに大きな意味がある。(図3参照)
木の持つ魅力
では、人間の居住空間に使われる木材には、どんな魅力があるのかをマウス実験で見てみよう。コンクリートの箱と木の箱にそれぞれマウスの夫婦を住まわせて、産まれた子供の生存率等を調べてみた。(図4参照) 10組ずつ夫婦をつくり、気温が25~6℃の頃に産ませると、木の箱では90%が生き残り、コンクリートでは4%しか生き残らなかった。これは熱を奪われる速度が木とコンクリートでは違うことによる。内臓や生殖器の発達が遅れるという結果が認められている。 つぎに、一日のうちコンクリート床と木の床のどちらで休むかを測定してみると、例えば、スギ床とコンクリート床では、ほとんどがスギ床で休んでいる。合板とコンクリートでは合板、スギとヒノキではスギ。これは多分匂いが原因であろうが、ヒノキとコンクリートでは、一日目はコンクリートで休んでいたが、二日目にはヒノキに移るという面白い結果が出た。 人間とマウスが違うことは当然であるが、最近の住宅は、人間の生物としての本能を無くすようなことが大変多くなっている。例えば、暖房や冷房のしすぎで、それがアレルギーやアトピー、花粉症など、かつてなかった症状を引き起こしていると思われる。木の床を採用した小学校の例では、子供が裸足で授業を受けているため、土踏まずがすごく発達したという。木の床なら落ちたときの衝撃も少なく、歩いても足が疲れず、熱も奪われない。最近では体育館、博覧会のパビリオンをはじめ、木造のジェットコースターなど、木が幅広く使われている。また外国では、古くからエスカレーターなどにも木を採用し現在でもステップを張り替えながら大切に使っている。 エコマテリアルとしての木材で家を造るということは結局、都市にもう一つの森林をつくるということだ。都市や街に樹木を植えることも大切だが、一番身近な地球環境保護への取り組みとは、あなたの住まい、木造住宅を大切にすることである。


